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ビリーとエルトンはどちらが偉大か?

      2022/08/13

佐々木 徹

中学1年の頃だったと思う。

 

ラジオでオンエアされていた、郷愁をさそう口笛が印象的な導入部から小気味よいロック調に移行する曲だ。再度口笛で終盤をむかえる構成が大人っぽく、格調高く感じられた。

 

のちに曲名「ストレンジャー」、アーティストはビリー・ジョエルと判明した。全曲自作曲を自演するピアノの達人で、音楽的才能に憧れていた私はビリー(ラジオでそう呼ぶのでそれが普通と思った)の音楽に取り憑かれた。彼の曲を英語で歌えたらかっこいい・・と歌詞を覚え、教科書にない英語表現に変に詳しい中学生が出来上がった。

 

73歳の現在も彼はヒット曲満載のコンサートを精力的に行っている。以前は英国の同じくピアノの達人エルトン・ジョンとのデュオコンサート‘Face to Face’が好評を博していた。

 

私はFace to Faceを日本で1回、在米時に2回観賞し、意外な事実に気付いた。観客の反応は日本では(予想通り)ビリー優位だがアメリカではエルトン優位だった。ビリーはアメリカ人なのになぜ?いまだ不思議に思っている。

 

自治医大に赴任した矢先、突然エルトン・ファンの同僚と「ビリーとエルトンはどちらが偉大か?」とディスカッションが始まった。「日本ではビリーだが世界的にはエルトンが高評価」と答えた。

 

エルトンはダイアナ妃国葬の際Candle in the Wind 1997を披露し翌年爵位を授与された。アルバム30枚以上、映画「ライオンキング」やミュージカル「アイーダ」の音楽など活躍華々しい。彼は同性愛者だ。まだ社会的理解の乏しい時代に勇気ある公表を行い差別に苦しみつつ今やLGBTQの象徴的存在である。故ジョン・レノンとも親交があった。最近ライブを引退したが日本最後の横浜公演は奇遇にも前述の同僚とともに観賞することとなった。

 

片や我らがビリー・ジョエル。公式アルバム12枚で、1993年を最後に発表していない。最後の来日は2008年なので彼を知る日本の若者は少ない。泥酔状態でFace to Faceのステージに登場、見かねたエルトンが全部演奏した2002年の珍事は語り草だ。今の奥様は4人目、人生いろいろ。バンド仲間から訴訟され解散、ベーシストはそれを苦に拳銃自殺してしまった。余談だが彼はよくバイク事故を起こす。

 

どちらが偉大か・・・ビリー・ジョエルの旗色はだいぶ悪い。

 

エルトンの音楽は素晴らしくBennie and the Jetsは何度聞いても美しい。が私の感性に響くのはビリー節だ。有名アルバムThe Stranger、52nd Streetはもとより最初期のCold Spring Harborには若きビリーの繊細さと才能の原石が感じられる。今聞くと、私はその間だけ10代に戻れる。

 

ビリー・ジョエルとエルトン・ジョン、どちらが偉大か。

ありきたりだが、一人一人のリスナーの心の中にしかない、が永遠の解答であろう。
 

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