声帯瘢痕に対する声帯内注入療法の効果に関する論文が掲載されました.
2022/11/20
金澤丈治
野澤助教の論文掲載のお知らせです.声帯の術後や炎症などで発症する声帯瘢痕は,難治性の音声障害を生じます.声帯瘢痕には,音声治療を中心に様々な治療が行われております.このうち音声外科治療には,喉頭微細手術による瘢痕除去や喉頭枠組み手術,更に,声帯内注入療法があります.私達は,前任地の国際医療福祉大学東京ボイスセンターと共同で塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の声帯内注入療法やステロイドの注入療法を行ってきました.今回の論文では,声帯へのステロイド注入療法とbFGF注入療法の治療効果の違いを後方視野的に検討いたしました.結果ですが,ステロイド注入群16例と,bFGF注入群16例を比較したところステロイド注入群では,Voice Handicap IndexおよびGRBAS尺度が有意に改善する一方で,平均最長発声持続時間(MPT)と平均呼気流量(MFR)に改善を認めませんでした.この一方,bFGF注入群では,VHI,MPT,MFRに有意な改善を認めましたが,GRBAS尺度に改善は認めませんでした.更に,ステロイド注入群では基本周波数が有意に上昇するのに対して,bFGF注入群では有意に低下しました. このように,声帯内注入療法は,声帯瘢痕に対してはステロイドもbFGFもどちらも有効ですが,治療効果には若干の差異がみられ,適応に関してはこの点を考慮する必要があるものと思われます.これらの治療は,当科および関連施設で行っております.関心のある方は担当医にご相談頂ければ幸いです.また,論文は専門医向けの内容ですが,関心のある方は下のリンクからご確認下さい.
Nozawa M, Takahashi S, Kanazawa T, Kurakami K, Hasegawa T, Hirosaki M, Kamitomai M, Komazawa D, Konomi U, Ito M, Watanabe Y. Intracordal injection therapy for vocal fold scarring: Steroid versus basic fibroblast growth factor. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2022 Sep 22;7(5):1465-1473. doi: 10.1002/lio2.881. eCollection 2022 Oct. PMID: 36258881
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