新井志帆臨床助教の論文が掲載されました
この度,新井志帆の論文が英文雑誌に掲載されました.頭頸部領域では稀少な血管肉腫に新たに分子標的治療に関わる受容体の発現に関する知見を加えたことが高く評価されたものと思います.また,専攻医での英文の執筆は立派だと思います.お疲れ様でした.
上顎血管肉腫の臨床経過と血管内皮増殖因子シグナル系の発現: 症例報告
上顎血管肉腫は血管内皮細胞に由来する侵攻性の腫瘍であり非常にまれである.最近,抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が注目されている.私達は,上顎血管肉腫患者の臨床経過を述べ,免疫組織学的解析によって評価されたVEGFシグナル伝達分子の発現について論じた.81歳の男性が,左上顎洞に侵攻性の腫瘍を認めた.生検で非定型核細胞増殖が認められ肉腫が疑われた.この上顎の悪性腫瘍は,手術,放射線療法,局所化学療法を組み合わせた集学的アプローチで治療された.最初の手術で得られた病理検査で上顎血管肉腫と診断された.計画された拡大手術後,病理学的残存腫瘍は認められなかったが,頸部リンパ節転移と遠隔転移が生じた.患者は最初の手術から24ヵ月後に死亡した.染色では,VEGF受容体(VEGFR)1,VEGFR2,リン酸化Akt,MAPK,Stat 3が陽性であった.今回の所見は,抗VEGF療法が上顎血管肉腫の治療に有益であることを直接示すものではないが,VEGFRシグナル伝達経路が他の部位に発生する血管肉腫と同様に上顎血管肉腫でも活性化されていることが明らかとなった.
Arai S, Igarashi T, Goto H, Kashima K, Sasaki T, Sakaguchi M, Fukushima N, Fujii H, Nishino H, Ito M, Kanazawa T. Sci Prog. 2024