医局ブログ│自治医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座

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G-CSF産生腫瘍

      2022/04/05

喉頭機能外科の金澤です.先日,リモートで行われた日耳鼻栃木県地方部会でも話題になった顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)産生腫瘍ですが,私にも懐かしい思い出があります.私が研修医の頃は,G-CSF製剤が製品化された直後で化学療法が飛躍的に進歩した時代でした.また,G-CSF製剤の開発はヌードマウス移植ヒト口腔底癌からG-CSF産生細胞株が樹立されたことが契機の1つとなったと聞いておりました.このような背景から抹消血中の好中球が異常に上昇する上顎癌がG-CSF産生腫瘍ではないかと気付くまでにはあまり時間はかかりませんでした(尤も,気付いたのは私というより周囲の先輩方だったというのが本当ですが..).実際,ヌードマウスに癌組織を移植とするとマウスの好中球は上昇し肺転移を起こしました.この結果に驚いて,当時の頭頸部腫瘍学会で症例報告したのを覚えています.これが私と,その後長く続く基礎研究との出会いとなったわけですが,今になると結果よりもむしろ先輩の西野先生(現教授)と動物実験施設に通ってご指導を受けたことや採血が上手くいかなくて悔しい思いをしたことの方が懐かしい思い出になっています.因みに,この癌も細胞株化することに成功したためNKO(西野-金澤-大久保)-1と命名し,その後,何人かの学位取得に貢献いたしました.日常の臨床が基礎研究に帰着した小さな例ですが,臨床家なら症例報告は一生続けなさいと言った最初の恩師の言葉を思い出します.

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