医局ブログ│自治医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座

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歌唱ジャンルと声帯ポリープに関する論文が掲載されました

      2022/04/05

喉頭機能外科の金澤です.前任地である国際医療福祉大学東京ボイスセンターとの共同研究がLARYNGOSCOPE誌に掲載されました.歌手のジャンルと性別による声帯ポリープや声帯結節の好発部位を示したもので興味深い内容になっています.日本語要約を書きました.専門的な内容ですが興味のある方は原著も参考にして下さい.

 

Hirosaki M , Kanazawa T , Komazawa D , Konomi U , Sakaguchi  Y, Katori Y, Watanabe Y.  Predominant Vertical Location of Benign Vocal Fold Lesions by Sex and Music Genre: Implication for Pathogenesis. Laryngoscope. 2021 Jan 9. doi: 10.1002/lary.29378. Online ahead of print. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/lary.29378

 

声帯粘膜病変の垂直方向部位の検討-性別と音楽ジャンルによる好発部位―

音声外来や外科手術において,声帯ポリープや結節などの粘膜病変では,声帯遊離縁内の垂直方向の部位(上部~下部)にばらつきがあることを経験する.声帯の下部は内視鏡では観察しづらいため,ストロボスコープを使用するなど垂直方向を意識して診療を行うことが重要だ.声帯粘膜病変の垂直部位に差が生じる原因については,これまでに検討されていない.今回我々は,その原因の1つとして「声区」に注目した.声区とは,地声や裏声などに代表されるものであり,地声では声帯全体が,裏声では上部のみが振動するなど,発声時の声帯の垂直方向の接触部位は声区により異なる.歌手では性別やジャンルごとに多用する声区に一定の特徴があるため,歌手の性別やジャンルによって病変の垂直部位が異なると考えた.当施設で手術を行った60名の職業歌手の108側の病変を調査した結果,裏声を多用する女性クラシック歌手では上部に病変が多く,地声を多用する歌手では下部に病変が多かった.本研究より,地声発声時には声帯の下部に機械的ストレスが多くかかると考えられた.性別,多用する声区,声帯にかかる機械的ストレスが,病変の垂直方向部位に差を生じる要因であることが示唆された.

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